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my favorite things 416-420

 my favorite things 416(2024年3月24日)から420(2024年4月30日)までの分です。 【最新ページへ戻る】

 

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 416. 1933年の『ドストイエフスキイ研究』(2024年3月24日)
 417. 1933年の『唐様でかめろん』(2024年3月25日)
 418. 1930年の『風俗資料』(2024年3月26日)
 419. 1932年の『匂へる園』(2024年4月29日)
 420. 1910年の『Le Jardin parfumé(匂える園)』(2024年4月30日)
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420. 1910年の『Le Jardin parfumé(匂える園)』(2024年4月30日)

1910年の『Le Jardin parfumé(匂える園)』01


『Le Jardin Parfumé du Cheikh Nefzaoui(匂える園)』(1910年、Isidore Liseux)が、古本屋さんにポツンとありました。
見たことのある表紙に驚きました。

『Le Jardin Parfumé du Cheikh Nefzaoui(匂える園)』は、15世紀にチェイック・ネフザウィ(Cheikh Nefzaoui)によって書かれたアラブ圏の性愛手引書です。
1886年にイジドール・リズー(Isidore Liseux、1835~1894)によってフランス語訳版が刊行されました。
これは、その1910年版です。

写真左が、1910年の《リズー版「ル・ヂヤルダン・パルフユーメ」の表紙》、写真右が、1932年の竹内道之助(1902~1981)の日本愛書家協会・風俗資料刊行会の雑誌『匂へる園』第一輯の表紙で、「すべて原寸、色彩も出來る限り原本をそのまゝを生かすことに努めた」もの。

1932年の複製の方が、色が濃くですぎて、細部はつぶれ気味ですが、複製への意欲は伝わります。
竹内道之助は、こうしたものに関心のあった人だったのだなということも分かりました。

 

1910年の『Le Jardin parfumé(匂える園)』02

『Le Jardin Parfumé du Cheikh Nefzaoui(匂える園)』(1910年)表紙

表紙絵の左下に「Fredillo inv」とあります。「inv」は、Invenit、Inventorの略で、下絵・原案者のこと。
Fredillo(フレディロ、1855~1924、Louis-Alfred Boisserand) は、フランスのエロティック挿絵画家。

 

1910年の『Le Jardin parfumé(匂える園)』03

限定版ですが、ナンバリングはされていません。

 

1910年の『Le Jardin parfumé(匂える園)』04

口絵と扉

1910年の『Le Jardin parfumé(匂える園)』05

 

1910年の『Le Jardin parfumé(匂える園)』061932匂へる園01

左は1910年リズー版、右は1932年の竹内道之助の日本愛書家協会・風俗資料刊行会『匂へる園』第一輯に掲載された複製。

どちらもアート紙に網版で刷られていて、個人的には魅力は薄いです。

 

〉〉〉今日の音楽〈〈〈

NHKのEテレを見ていたら、『スピーク・ロー』という法律を扱った短いドラマをやっていました。
作曲クルト・ワイル・作詞オグデン・ナッシュの「Speak Low」が主題歌になっていました。
この音色、歌声に聞き覚えがあると思ったら、小田朋美でした。

ということで、小田朋美のソロCDを引っ張り出しました。

小田朋美『シャーマン狩り』(2013年、エアプレーンレーベル)

小田朋美『シャーマン狩り』

 

小田朋美『グッバイ・ブルー』(2017年、APOLLO SOUNDS)

小田朋美『グッバイ・ブルー』01

小田朋美『グッバイ・ブルー』02

 

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419. 1932年の『匂へる園』(2024年4月29日)

『匂へる園』第一輯01


竹内道之助(1902~1981)が、昭和8年(1933)に三笠書房を創立する直前の、昭和7年(1932)~昭和8年に、風俗資料刊行会・日本愛書家協会から刊行していた雑誌『匂へる園』です。
5号まで刊行されています。
梅原北明(1901~1946)のつくったエログロナンセンスの流行の終わりの時期に出された雑誌です。

綴じがステープル綴じなので、錆び崩れて、痛々しくなっています。

この『匂いの園』の終わりとともに、三笠書房に切り替わっていきます。

昭和5年(1930)4月~昭和8年(1933)1月 風俗資料刊行会・日本愛書家協会 東京市本郷区坂下町七六
昭和8年(1933)4月 三笠書房 渋谷区八幡通一ノ十
昭和8年(1933)6月 三笠書房 淀橋区戸塚町一ノ四四九
昭和9年(1934)7月 三笠書房 東京市神田区神保町三ノ六

この転居で、エログロナンセンスの時代色を消したのでしょうか。
一方で、風俗資料刊行会・日本愛書家協会から三笠書房への流れは、断絶でなく地続きとも感じます。

手もとには、状態はあまりよくありませんが、5冊とも揃っています。
この第一輯には、長尾桃郎(1897~1979)の蔵書票が貼られていました。

 

竹内道之助の風俗資料刊行会について、斎藤夜居『大正昭和艶本資料の探究』(1969年、芳賀書店)に次のようにあります。

  風俗資料刊行会(竹内道之助)の事業はその意味では、危い橋も余りわたらず、おもしろさを制圧し、煮え切らぬ点があったとしても、読者対刊行者の親近感に欠ける点があったとしても、発禁も少なくて済み、経営も上手にやっていたという感じは、残された出版物に明瞭に現れている。それだけに〈味〉〈匂い〉も薄くなっているが特色としては印刷が美しくなっていることであった。軟派出版の印刷をきれいにするには、正規の印刷会社に依頼し、かくれた仕事にしないことで、そうなってはもう内容が生ぬるくなっても之はまったく仕方がない話でもあった。判り切ったことだが、軟派で一番おもしろくて正確なのは原典籍である。そして次に復刻物で、刊行者の私意の加えられていないもの。それから原典籍の忠実な紹介である。……まずいのは中途半端な蛇の生殺し式の書き直しということになろう。
 風俗資料刊行会で発行した雑誌は左の三種。
 風俗資料(昭和5・4~同年12月)全七冊、増刊号を含む。
 デカメロン(昭和6・2~昭和7・5)全十六冊、うち発禁は二冊。
 匂へる園(昭和7・7~昭和8・1)全五冊。
 これらはいずれも瀟洒なすっきりした感じの雑誌で、特に匂へる園などはカバー附というこった趣向であった。

 

『匂へる園』第一輯では、表紙と口絵について、次のように説明されています。

 表紙に使用したデザインはリズー版「ル・ヂヤルダン・パルフユーメ」の表紙で、すべて原寸、色彩も出來る限り原本をそのまゝを生かすことに努めた。原本その儘と云へば、大體本誌のサイズからしてリズー本に則って、その感じを出さうとしたのである。
 口繪四葉亦同書掲載のもの、巻頭の限定番號押捺個所に用ひた影繪は「薫園」獨逸譯の廣告から取り、その對向面即ち目次の前に載せたカツトはキユーリユー版「薫園」の挿繪から拔萃したものである。

 

外国書の図版の権利関係についてずぼらだった時代ならではのブックデザインです。

 

『匂へる園』第一輯

『匂へる園』第一輯02

手もとにあるものには限定番号「239」が押捺されています。

巻頭の限定版號押捺個所に用ひた影繪は「薫園」獨逸譯の廣告から取り、その對向面即ち目次の前に載せたカツトはキユーリユー版「薫園」の挿繪から拔萃したものである。

 

『匂へる園』第一輯03

 内容
日本好色文學史序説  小酒井恭二
大阪の新聞錦繪  平井蒼太
悦漏談娯  竹浦樓主人
世界の好色美術家  原比露志
近世 變態早熟兒考  高月代二
やれ突け、それ突け やれ吹け、それ吹け 雜考  小居閑人
性學の提唱  岡田甫
黑奴性戯秘話  酒井潔
東洋房術志  黑貞輔
色を見て動く  尺仙秀
斷罪觀念の最尖端  小紋幸平
Le Jardin Parfumé 書誌  黑貞輔
百戰必勝 技巧奥儀巻  一力安
エロサービス展望  今村三四夫
無明煩惱の悟  小内鬼面子
接吻に關する我國の文獻  織田巫光
三人の女  柴田道司
アリンス國咒法くさぐさ  岳芳樓主人
日本性慾美術史參考書目  原浩三

 

『匂へる園』第一輯04

昭和7年7月1日發行
編輯印刷兼發行者 竹内道之助 東京市本郷区坂下町七六
發行所 日本愛書家協會
印刷所 皎明社印刷所  東京巣鴨町一一六四
發賣所 風俗資料刊行會  東京市本郷区坂下町七六

奥付の絵は、オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley)装画、アリストパーネス『女の平和』(1896年)から。

 

『匂へる園』第二輯

『匂へる園』第二輯01

『匂へる園』第二輯02

『匂へる園』第二輯03

  内容
現代軟派文獻大年表
軟派出版略史
軟派出版所と其書目
軟派全集叢書類書目
軟派及特殊雜誌書目
邦譯軟派書目
軟派風俗關係發禁書目
軟派及特殊參考書目
書誌關係雜誌目錄
發禁書目掲載參考書目

 

『匂へる園』第二輯04

昭和7年8月1日發行
編輯印刷兼發行者 竹内道之助 東京市本郷区坂下町七六
發行所 日本愛書家協會
印刷所 皎明社印刷所  東京巣鴨町一一六四
發賣所 風俗資料刊行會  東京市本郷区坂下町七六

『匂へる園』第二輯は、『談奇黨(党)』第3号と並んで、エログロナンセンスの時代にかかわった者が、同時代にまとめた貴重な書誌資料になっています。

 

国会図書館の読者送信サービスで閲覧できる『匂へる園』第二輯は、第二刷です。
奥付だけが貼り替えられています。

昭和8年10月5日第二刷發行
編輯印刷兼發行者 竹内道之助
發行所 日本愛書家協會 東京市淀橋區戸塚町一ノ四四九
發賣所 風俗資料刊行會 東京市淀橋區戸塚町一ノ四四九
印刷所 皎明社印刷所

日本愛書家協会・風俗資料刊行会の住所が、三笠書房の「東京市淀橋區戸塚町一ノ四四九」と同じになっている、珍しい例です。
切り替わったのではなく、同時進行で重なっていたわけです。

 

『匂へる園』第二輯には、三笠書房創立のときに竹内道之助と組むことになる西谷操(秋朱之介、1903~1997)の梨甫書局についての記述もあります。

梨甫書局(西谷操)

昭和四年九月、南柯書院より分離して下谷區御徒町に創立、本人は横濱市本牧に居たらしい。
「イヴォンヌ」 昭四、九 メリイ・サツクイツト作、西谷操譯。フランスの珍書。
梨甫書局の處女出版として頒布されたとか、發刊前に押収されたとかで問題になつた「イヴォンヌ」は日本文献書房からも刊行の發表があつたやうに記憶する。
其の他此處から發表になつたものは左の通りであるが、イヴォンヌの他は凡て未刊。
「フランスの女」(異國の香)
「ラチ・ラトナ・プラディピカ」
「びようむ」
「ガミアニ伯爵夫人」アルフレツド・ミユツセ作、羽塚隆成譯
「ガミアニ伯爵夫人」に就ては雜誌「デカメロン」第四、五、六號に酒井潔氏の解説が載つてゐるし、昭和六年一月には世界獵奇全集に「歡楽の二夜」丸木砂土譯として刊行されたが發禁となつた。
其他雜誌「悪魔師團」發刊の發表があつたが未刊に終つた。(悪魔師團は次に悪魔團と改稱された)
横濱からは、
「キリスト教の慘虐と淫虐」羽塚隆成著
昭四、一二 四部もの
「ロツプス畫集」 昭四、一一
「フツクス畫集」 昭五、二
等頒布された模樣である。

秋朱之介編輯『悪魔師團』とは、どういうものを考えていたのでしょうか。その刊行予定のちらしが存在するのであれば読んでみたいものです。

三笠書房の最初期、原浩三編『ロップス画集』(昭和8年4月25日発行)を刊行しています。
横浜で刊行された『ロップス画集』とかかわりがあるのでしょうか。

 

『匂へる園』第二輯が刊行された昭和7年夏の段階では、竹内道之助と秋朱之介は、まだ再会していなかったようです。

 

『匂へる園』第三輯

『匂へる園』第三輯01

『匂へる園』第三輯02

『匂へる園』第三輯03

  内容
風俗戯畫(扉と口繪)
東西文藝に現はれたる秘具雜考  酒井潔
日本色情藝術史資料  北野博美
房内禁日考  黑貞輔
『末摘花』及び其類書  平井蒼太
この世からなる地獄の相  逐放生
モダン女護ヶ島物語  皆川美彦
江戸時代性的行状記  熊谷正男
現代性的小咄  盬田三平
歌舞伎劇エロ台詞考  今村三四夫
巴里・並木路夜曲  伊志一郎
グロテスク見世物抄  松浦泉三郎
潤色榮花娘(世界珍書解題・續一)  黑貞輔

 

少し水濡れがあったのか、口絵のアート紙のコーティング部分が剥離していたのが残念です。
この時代のアート紙に、網版の図版が印刷されたものには、魅力が感じられません。

秋朱之介も、「アート紙ってやつは大嫌いな紙なんですよ、石だから」と言っていました。

 

『匂へる園』第三輯04

昭和7年9月15日發行
編輯印刷兼發行者 竹内道之助 東京市本郷区坂下町七六
發行所 日本愛書家協會
印刷所 互光社印刷所  東京市京橋湊町一ノ一一
發兌 風俗資料刊行會  東京市本郷区坂下町七六

 

『匂へる園』第四輯

『匂へる園』第四輯01

『匂へる園』第四輯02

   内容
古今變態風俗畫鑑(口繪)
自一八八〇年至一八九〇年 英國艶本よりの佛譯本書目解題  酒井潔
世界の好色美術家(下)  原比露志
おぢやれ  平井蒼太
現代エロ廣告考  中野榮一
埒外物關係執筆分類目錄及び解説  尾崎久彌

 

『匂へる園』第四輯03

昭和7年11月10日發行
編輯印刷兼發行者 竹内道之助 東京市本郷区坂下町七六
發行所 日本愛書家協會
印刷所 互光社印刷所  東京市京橋湊町一ノ一一
發兌 風俗資料刊行會  東京市本郷区坂下町七六

手もとにある第四輯には、限定番号押捺ページがありませんが、奥付に「1788」とあります。
『匂へる園』の発行部数は、そんなに多くなかったようなので、謎の数字です。

 

『匂へる園』第四輯04

「第二次會員募集」のちらし。
梅原北明から続く流儀で「發禁」を売り文句にしていますが、昭和7年(1932)、もう「發禁」という文句で、エログロの本が売れる時代ではなくなってきています。
左隅に「會費切」のスタンプが押されています。
会費をはらってもらえないと、次号は送りませんという意味です。

 

『匂へる園』第五輯

『匂へる園』第五輯01

手もとにある第五輯は、カヴァーつきです。
表も裏もオーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley、1872~1898)の『サヴォイ(Savoy)』誌(1896年)のイラストから。

表は、リヒャルト・ワーグナーの『ラインの黄金』(Das Rheingold)のためのビアズリーの装画(1896年)から。ヴォータンとロゲ、大蛇に化けたアルベリヒ。左のヴォータンと右の大蛇の細部が黒くつぶれてしまっています。『サヴォイ』2号に掲載。

裏は、ビアズリー『THE BALLAD OF A BARBER(理髪師のバラッド)』の章末飾り(Cul-de-Lampe)。「理髪師のバラッド」は、理髪師カルーセルが絞首刑になるまでの物語詩。『サヴォイ』3号に掲載。

 

『匂へる園』第五輯02

『匂へる園』第五輯03

『匂へる園』第五輯04

  目次
口繪
ファンニイ・ヒルの挿繪(寫眞銅版)
江戸・四ツ目屋の引札(凸版)
東都性具粹藥店の考現學(凸版)
内容
インポテンドの精神分析  エリ・フリードランド 大江洪太郎譯
新百物語  アントアヌ・ド・ラ・サアル作 大原二郎譯
四ツ目屋漫談  竹浦樓主人
東都性具粹藥店打診  左右津良
房内經  黑貞輔
最近秘藥文献資料考  酒井潔

 

『匂へる園』第五輯05

昭和8年1月1日發行
編輯印刷兼發行者 竹内道之助 東京市本郷区坂下町七六
發行所 日本愛書家協會
印刷所 佐脇印刷所  東京市芝区田村町五ノ五
發兌 風俗資料刊行會  東京市本郷区坂下町七六

奥付の絵は、ビアズレーが手がけた「The Spinster's Scrip」という本の広告ポスター(1894年)から。

 

《未刊》『匂へる園』第六號 内容(二月中旬發行)ちらし

『匂へる園』第五輯06

   内容
性的に見た古代の信仰  北野博美
夜這悪戲譚  佐々木喜善
末期艶本解題補遺  岡田甫
生殖器異名考  中野榮一
變態少年の強姦常習事件  澤良太
珍本手管秘傳五色墨(完結篇)  酒井潔
「昨日は今日の物語」「鹿の筆巻」  朝香駿一郎
上海の土耳古風呂  岡田甫
臺灣魔窟探訪記  佐々木杜雄
「繪本笑上戸」補遺  青葉山人子
獨逸性的珍書解題  黑貞輔
性的川柳日本外史  原比露志

 

『匂へる園』第六輯は刊行されませんでした。竹内道之助は、風俗資料刊行会から三笠書房へ舵を切ります。

『匂へる園』の印刷所が、皎明社印刷所、互光社印刷所、佐脇印刷所と、三笠書房と関わりの深い堀内印刷所でないところも興味深いです。

 

 拾い読み・抜き書き

長尾桃郎蔵書票

手もとの『匂へる園』第一輯には、蔵書票が貼られていました。

 是風禁書
 長尾桃郎蔵

「風禁」は風俗禁止のこと。発禁書の大コレクターだった長尾桃郎(1897~1979)の旧蔵書でした。

 

長尾桃郎について書かれた文章を引用してみます。


齋藤昌三『三十六人の好色家』(1956年2月15日発行、創藝社)から

 軟文献の蒐集家であり研究家で、而も実行家を兼ねたものに長尾桃郎がある。
 彼は明治三十年岐阜県高山町に生れ、土地の中学校を経て、遠く小樽高商に遊学した。左翼の小林多喜二とも親交があつただけに、普通なら高商卒業者は銀行か会社に就職して、サラリーマンで納まるところだが、異端的な彼は全日本海員組合に入つて、組合の労働問題や、組合の新聞編集に全力を注いで今日に至つている所に特色がある。
 だが、それは彼の第一義的な方面で、その反面は非常な文学の愛好家であり、殊に明治大正の筆禍文献の蒐集家としては、第一人者である。往年大阪のA氏は天下一本という詩集まで蒐集して、名実共に発禁蒐集の日本一であつたが、研究に至らぬうちに散佚の余儀なきに至つた今日では、戦火から護り通した桃郎文庫は、今や風俗出版界の過渡期時代に当つて、分類研究の好機となつて来ている。
 最近創元社から出版された某氏の、『現代文芸発禁史』の杜撰を見るにつけ、彼は該書に相当補正を加うべきだと評しているが、去りとて類似な研究を今更発表するも大人気ないとしている。そこで彼は同人雑誌地方誌まで包合した雑誌から、風俗上問題になつた性的文芸作品に局限して、別途の研究に着手しているが、これは確かに他に一人の追従も許さぬ仕事だけに、遣り甲斐があると卒業を期待している。

 

斉藤夜居『愛書家の散歩』(1982年11月20日初版第1刷発行、出版ニュース社)から

 私が初めて長尾桃郎さんにお逢いしたのは、昭和三十九年の浅春のころであった。横浜市中区翁町の仮寓の、その居室はベッドと書籍だけだった。痩身長軀を和服でつつみ、眼鏡の奥の瞳は想像したより鋭どくは光らず、むしろ優しさと人なつこさが溢れ出て居り、「おう、よく来た」と言った声音も実に明瞭で老人じみた気配が感じられなかった。私が今迄に接した三、四人の読書愛書道の達人のうちに、期せずして一致する点は、淡々としてご自身の過去現在の生活環境を語って下さった方々があったことで、ある愛書家は昭和六、七年の頃当時流行の映画そのままに、大学は出たけれど、という苦悩多かりし青春の日の無職者の嘆きを語って下さった方もある。勿論そのことは、過去として語るべきよき〈現在〉に恵まれて居られるからでもあろうが……。長尾さんは、病身の夫人は関西に居られる。ここで独り暮しをつづけていることは、自己の読書生活と著作の進行の便利ならんが為のみという、それだけの気持で、暮らしのことは今のところ何も考えていない。それなのに、
 「やはり年のせいでしょうか。怠け心が骨の髄まで浸みこんだせいでしょうか。物がうまく運ばないんだ。自分の不勉強をつくづく嘆かわしく思っているよ、もうこういう生活が半年たった」

  《略》
 私は桜木町駅に下車して、この仮寓を訪れるために地理の不案内から大分手間取っているので、その時はもう八時半を過ぎていたと思う。それから十二時まで、何を語り合ったかはっきりした記憶がない。――辛うじて、東京への国電終電s車が間に合う時間を残して立ち上ったが、眼の少し不自由な長尾さんは帰途の用意のために懐中電灯をふところに入れ、駅のホームまでお見送り下さるという。
  《略》
 ホームに電車が来たが、まだ別れられぬ気持で長尾さんは、桜木町、横浜駅、東神奈川まで同乗下さった。この未練たっぷりな私たちの気持は、何であるか?
長尾桃郎さんはこう言った。
「本というものは一冊じゃない。だから本の話をしていると、世の中には本は無数にあるのだから、何時までも、何時までも話の種がつきないんだ。必ず、又来て下さい」
 長尾さんは深夜のプラット・ホームに一人で降りた。私のいる車窓に向っていつまでも手を振ってくれた。電車に同乗する時に、東京からの最終がまだ一台来る筈だからと云った。それに乗って又桜木町に戻ればいいのだから、と。
 ――私はあの夜、本当に桜木町まで戻る電車があればよかった、と今でも思っている。

 

この文章に書かれた長尾桃郎で、小津安二郎の映画『東京暮色』の中村伸郎のたたずまいが思い浮かびます。

長尾桃郎の発禁書コレクションなかで労働運動関連のものの一部は大阪市立大学の「長尾文庫」に残されていますが、「戦火から護り通した桃郎文庫」のうちエログロナンセンス関連のものは散佚してしまいました。

 

     

みかんの花

檸檬の花のかおり

藤の花01

藤の花02

藤の花03

藤の花のにおい

春の燕01

春の燕02

燕の春

 

〉〉〉今日の音楽〈〈〈

パブロフス・ドッグの最初のアルバム(1975年)と、今のところ、いちばん新しいスタジオアルバム(2018年)。

かつては「Julia」「Sue」「Mersey」「Jenny」「Angeline」「Suzanne」と、パブロフス・ドッグの曲のタイトルになっている幻の女性たちは強い個性の存在として音楽と共にあったのですが、いつのまにか、もうはっきりしない遠い面影のようにも感じられます。

 

Pavlov's Dog『Pampered Menial』(1975年、Columbia)

Pavlov's Dog『Pampered Menial』01

Pavlov's Dog『Pampered Menial』02

Pavlov's Dog『Pampered Menial』03

初版の米ABC版でなく、米コロンビア盤。「For Governmental Sale Only」と印されたバーゲン品で、鹿児島の十字屋のセールで購入しました。

 

Pavlov's Dog『Prodigal Dreamer』(2018年、Rockville Music)

Pavlov's Dog『Prodigal Dreamer』01

Pavlov's Dog『Prodigal Dreamer』02

1975年盤も2018年盤も、ジャケットにエドウィン・ランドシーア(Sir Edwin Henry Landseer、1802~1873) の犬の版画が使われています。

 

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418. 1930年の『風俗資料』(2024年3月26日)

『風俗資料』第壹册01


第380回 1928~1929年の『變態黄表紙』(2022年8月31日)」でも、『風俗資料』について少し触れましたが、三笠書房以前の竹内道之助(1902~1981)を知るために、改めて紹介します。

『風俗資料』は、昭和5年(1930)、三笠書房の前身にあたる、風俗資料刊行会で出した最初の雑誌です。
別冊を含め7冊が刊行されています。そのうち第6冊と臨時増刊 『世界媚薬考』が風俗禁止で発禁になっています。

風俗資料刊行会は、昭和5年4月、竹内道之助が「小石川区西青柳町」で創立したと、風俗資料刊行会が刊行した雑誌『匂へる園』(第二輯)にありますが、どのくらいそこにいたのかはっきりしません。
「東京市本郷区坂下町七六」で刊行されたもので、いちばん古いものも昭和5年4月の発行です。

昭和5年4月から昭和8年(1933)1月ごろまでの風俗資料刊行会の住所「東京市本郷区坂下町七六」は、竹内道之助の住所だったようで、「日本愛書家協会」の住所も同じでした。
そこから昭和8年4月には「渋谷区八幡通一ノ十」に移って、三笠書房を立ち上げ、昭和8年6月には「淀橋区戸塚町一ノ四四九」に移り、昭和9年(1934)7月に「東京市神田区神保町三ノ六 」に移っています。

出版社としては、落ち着きのない転居のしかたです。

 

風俗資料刊行会以前の、昭和3~4年(1928~1929)、竹内道之助は、福山印刷所(東京市牛込区西五軒町三十四)の福山福太郎のもとで働いていたようです。その文藝資料研究會の編集者時代について、竹内道之助は小説集『地獄の季節』(1949年7月10日発行、三笠書房)収録の「薊」に書き残しています。
「薊」が終わったところから、風俗資料刊行会がはじまります。
この本は、国会図書館の送信サービスで閲覧できます。

興味深いのは、『地獄の季節』の発行者が竹内富子でなく、廣瀬文子となっていることです。
1949年ごろ、竹内富子は三笠書房の出版責任者として公職追放になっていたようです。 そのとき竹内道之助は無傷だったのでしょうか。

 

手もとにある『風俗資料』を並べてみます。

 

『風俗資料』第壹册

昭和5年4月10日発行、風俗資料刊行會

『風俗資料』第壹册02

 風俗資料 第壹册 目錄

漫畫に現れた時代粧(口繪)
子供の遊戯に殘つた古代の風俗  中山太郎
創成期に於ける遊女評判記  石川巖
女護ヶ島傳説考  皆川美彦
末期會本解題  岡田甫
乳房の話  佐藤紅霞
支那の乞食  後藤朝太郎
柳樽夢壽女往來  原比露志
異國歡樂境風景の數々  喜多壯一郎
惡食漫考  山下二郎
實在の靈怪  岡田建文
足を洗ふ話  佐々木喜善

原比露志と原浩三は同一人物です。本名は梶原景浩(1901~1979)。幕末会津藩家老、梶原平馬・山川二葉の孫。さかのぼれば鎌倉時代の梶原景時の子孫です。
博覧強記の岡田甫(1905~1979)も、まだ20歳代半ばです。

 

『風俗資料』第壹册03

第參册までの編輯兼發行者は山下登ですが、發行所の風俗資料刊行會の住所は、竹内道之助の住所になっています。

 

『風俗資料』第貳册

昭和5年5月15日発行、風俗資料刊行會

『風俗資料』第貳册01

『風俗資料』第貳册02

 風俗資料 第貳册 目錄

ルネツサンス時代の混浴風呂  佐藤紅霞
想嫁時世粧  耽好洞人
幕末俗謠の破禮唄に就て  秋庭太郎
貝談百物語  原比露志
仏蘭西女見物  道家齊一郎
放尿漫談  岡田甫
貞操帶を描く話  桃源堂主人
西班牙軟文學夜話  中代富士男
明治初年の布達  皆川美彦

耽好洞人は、富岡多恵子の小説『壺中庵異聞』のモデルになった、平井蒼太(平井通、1900~1971)の、たくさんあったペンネームの一つです。

 

『風俗資料』第貳册03


『風俗資料』第參册

昭和5年6月15日発行、風俗資料刊行會

『風俗資料』第參册03

『風俗資料』第參册02

 風俗資料 第參册 目錄
世界見世物研究號
古今見世物圖譜(扉、口繪並に挿繪)
人體異形見世物考  桃源堂主人
裸女展覽の變遷  佐藤紅霞
德川時代の見世物暦  皆川美彦
淺草奥山「夫人脚伎」に就て  石川巖
レブユー往來  小倉浩一郎
アメリカン・レヴユー  津田耕三
見世物戲談  原比露志
好色のぞきからくり  岡田甫
古今見世物ガセネタ抄  松浦泉三郎
見世物追憶  佐々木喜善
見世物女角力志  耽好洞人

 

『風俗資料』第參册03

 

『風俗資料』第四册増大號

昭和5年7月28日発行、風俗資料刊行會

『風俗資料』第四册増大號01

『風俗資料』第四册増大號03

 風俗資料 第四册 増大號 目錄
口繪四葉
變態男女考  田中香涯
大東閨語  竹浦樓主人
續見世物女角力志  耽好洞人
女が馬に騎つた古代の風俗  今村螺炎
百年前の日本 丸木砂土
五日物語  佐藤紅霞
ルードラ  朝香駿一郎
回教殘虐奇譚  御堂聽雨
東方淫蕩の華抄  佐藤紅霞
青春の泉  竹内道之助
Halicarnassusにて  原比露志
危險なる喃語  山下二郎

 

『風俗資料』第四册増大號02

第四册から、編輯印刷兼發行者が竹内道之助になります。

 

『風俗資料』第五册

昭和5年9月10日発行、風俗資料刊行會

『風俗資料』第五册01

『風俗資料』第五册02

 風俗資料 第五册 目錄
刑罰圖譜(扉並に口繪)
マツクス・エルンスト怪奇畫選(口繪)
追補日本好色美術史  原浩三
江戸時代の性的衞生思想  佐藤紅霞
古代に於ける上流羅馬人の日常生活  前川正司
好色映畫風俗考  小倉浩一郎
隱れ里の話  佐々木喜善
川柳乞食考  大曲駒村
サード侯爵夫人の話  朝香駿一郎
蒼溟樓漫話  岡田建文
ゴンクウルの好色畫研究  大原二郎

 

マックス・エルンスト(Max Ernst、1891~1976)の『百頭女(La femme 100 têtes)』(1929年)から、4つのコラージュが口絵に使われています。「怪奇画」とくくられるところが味わい深いですが、紹介は早いです。

大曲駒村については、「第253回 1981年の『浮世絵志』復刻版(2019年1月21日)」 「第293回 1943年の『書物展望』五月號(2019年12月9日)」で少し書いています。

 

『風俗資料』第五册03

 

『風俗資料』第六册

昭和5年11月12 日発行、風俗資料刊行會

『風俗資料』第六册01

『風俗資料』第六册02

 風俗資料 第六册 目錄
男女好色繪巻(扉並に口繪)
ポムペイの遺蹟(口繪)
死都ポムペイの遺蹟と遺物  原浩三
古代に於ける上流羅馬人の日常生活  前川正司
藝術上のエロティツク  津田耕三
明治・大正・昭和東都遊郭張見世の變遷  秋庭太郎
ポムペイのドライブ  石川榮耀
好色備忘錄  岡田甫
續好色映畫風俗考  小倉浩一郎
世界好色蚤物語  浪華醫人
希臘娼婦考  藤岡光一
山陰道の外道の話  岡田建文

この号は風俗禁止、発禁になったようです。

 

『風俗資料』第六册03

 

『風俗資料』は他に、当時、風俗禁止で発禁になった臨時増刊 『世界媚薬考』があります。目次は次の通り。

  内容
世界媚藥考  佐藤紅霞
秘藥蛇牀子と人蛇交婚綺談  桃源堂主人
紅毛傳來ペプラホの法其他  浪華醫人
艶本に現れた媚藥と紅毛  原比露志

この号は、国会図書館の送信サービスで閲覧できます。

 

     

竹内道之助が三笠書房の前に営んでいた風俗資料刊行会の本で、国会図書館の送信サービスで閲覧できるものを中心にピックアップしてみました。

このときの住所は「東京市本郷駒込坂下町七四」です。斎藤夜居『大正昭和艶本資料の探究』(1969年、芳賀書店)に、平井蒼太の談話を含む、次のような記述がありました。

この(風俗資料)刊行会はその後三笠書房と改称し文学書や飜訳物の出版社として知られている。寄稿家の一人だった平井蒼太の談話では当時の発行住所本郷坂下町七八は路地裏の棟割長屋みたいな所で、日本愛書家協会と風俗資料刊行会という木札が表札代りにぶら下げてあるだけで、社主竹内道之助は口数のすくない不愛想な男だったという。室内には書物らしいものはまったく見当たらなかった――。当時よく知られた竹内道之助が刊行した単行本は次の通り、
 寝室の美学(正続2冊) 原比露志
 好色秘事談綺  佐藤紅霞
 浮世絵と美人画  尾崎久弥
 ポムペイの美術(限定版)  原浩三
 苦痛と快楽 ルシアン原著  竹内道之助訳
 日本好色美術史  原浩三
 獄中性愛記録 シヨワジ女史  酒井潔訳
 唐様でかめろん  尺仙秀訳

風俗資料刊行会は、いわばエログロナンセンスの時代の最後を飾る出版社で、三笠書房の渋谷時代の刊行書も、原浩三編『ロップス画集』『ビアズレエ画集』、酒井潔『薫苑夜話』と、その流れをくむものでした。

外国文学の翻訳書中心の文藝出版ということでは、昭和8年6月に「淀橋区戸塚町一ノ四四九」に移転してからが始まりということになるのでしょう。

 

以下、竹内道之助と堀内文治郎・堀内印刷所の結びつきを示すため、「堀内文治郎・堀内印刷所」を青色で表記しておきます。

 

風俗資料刊行会

発行所 東京市本郷駒込坂下町七四

○原浩三『日本好色美術史』
昭和5年7月12日発行 定価参円八拾銭
発行者 竹内道之助
印刷所 萩原印刷所
印刷者 石黒平吉

○ポオル・ド・レグラ『El ktab lois secrétes de l'amour』
昭和5年7月18日発行 (非売品)
翻訳兼発行者 竹内道之助 東京市本郷区駒込坂下町七四
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 萩原印刷所 東京市牛込区山吹町一九八

○佐藤紅霞『好色秘事談綺』
昭和5年9月15日発行 定価二円五十銭
発行者 竹内道之助
印刷所 堀内印刷所
印刷者 堀内文治郎

○原比露志『寝室の美学』
昭和5年10月20日発行 定価一円五十銭
発行者 竹内道之助
印刷者 山村浩三 東京市小石川区関口水道町四五
有名社印刷

○『世界媚薬考』風俗資料臨時増刊
三百部限定 非売品 風俗禁止
昭和5年12月1日発行
編輯印刷兼発行者 竹内道之助
印刷所 皎明社印刷所 東京市外巣鴨町巣鴨一一六四

○ルシアン『苦痛と快楽』
装幀 訳者  定価一円五十銭
昭和5年12月18日発行 定価一円五十銭
訳者 竹内道之助
発行者 竹内道之助
印刷所 有名社
印刷者 山村浩三

○原浩三『ポムペイの美術』
三百部限定版 定価七円
昭和6年6月15日発行
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
写真製版 茂木製版所
印刷所 萩原印刷所
製本所 橋本製本所

○尾崎久彌『浮世繪と美人畫』
昭和6年7月15日発行  定価二円八十銭
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷所 萩原印刷所
製本所 山田製本所

○マリイズ・シヨワジ女史著、酒井潔訳『獄中性愛記録』
昭和6年8月10日発行 定価一円
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷所 萩原印刷所

○原比露志『港々の猟奇街』 (デカメロン叢書)
昭和6年10月25日発行  定価六十銭
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷所 萩原印刷所

○小倉浩一郎『世界映画風俗史』
昭和6年11月15日発行 定価一円五十銭
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷所 萩原印刷所

○丸木砂土『女性西部戦線』
昭和6年12月28日発行 定価一円八十銭
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷所 福山印刷所

○原比露志『Du cinéma voluptueux et scientifique』
昭和7年3月15日発行 非売品
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷者 萩原印刷所

○酒井潔『Note galante de la littérature française ⅩⅧ[e]-ⅩⅨ[e]』
昭和7年5月20日発行 非売品
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷所 萩原印刷所

○黒貞輔『東洋愛慾文献』
昭和7年5月20日発行 非売品
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷所 萩原印刷所

○『好色風俗史講座』第三巻
昭和7年5月21日発行
発行者 竹内道之助
印刷者 福山福太郎 東京市牛込区西五軒三四
福山印刷製本所印刷
  第三巻内容
 性的犯罪研究 松岡貞治
 日本売淫史 青山倭文二
 怪奇演劇雑考 畑耕一
 花街文献研究 石川巌
 変態蒐集研究 齋藤昌三
 変態作家列伝 井東憲
 変態商売資料 一ノ木麟太郎

○朝香駿一郎『Chats on bed-chamber』
昭和7年10月10日発行 風禁
発行者 竹内道之助
印刷所 互光社印刷所

○松浦泉三郎『好色見世物志』
昭和7年10月10日発行 定価一円八十銭
発行者 竹内道之助
印刷所 互光印刷所

○ヷン・デ・ヱルデ著 竹内道之助訳『続 完全なる夫婦』
昭和7年11月20日発行  定価一円
発行者 竹内道之助
製版所 堀内印刷所
印刷所 萩原印刷所

○『匂へる園』第二輯 現代軟派文献大年表
昭和7年 月1日発行
昭和8年10月5日第2刷発行 定価80銭
編纂印刷発行者 竹内道之助
発行所 日本愛書家協会 東京市淀橋区戸塚町一ノ四四九
発売所 風俗資料刊行会
印刷所 皎明社印刷所

 

『匂へる園』第二輯の「現代軟派文献大年表」は、エログロナンセンスの珍書出版の時代を総括する貴重な資料になっています。
そのなかで、自分の風俗資料刊行会や、風俗資料刊行会で出した雑誌について、次のように書いています。

風俗資料刊行會(竹内道之助)

昭和五年四月、竹内道之助が小石川區西青柳町に創立、雜誌「風俗資料」を刊行し、毎月一册一ヶ年繼續事業として計畫されたが、これは半ヶ年で打ち切り、次で雜誌「デカメロン」を刊行する他、主として軟派ものの單行本を出して、昭和五年六月以來現在に於ては本郷區駒込坂下町に事務所を置いてゐる。
「エル・キターブ」 竹内道之助譯 昭五、七
昭和二年八月にも文藝市場社から發表になつて元始篇の一篇のみが發刊されてゐるが、風俗資料刊行會刊のものは忠實なる全譯である、發禁となつた。
「日本好色美術史」 原浩三著 昭五、六
   別册挿畫附錄付、四六判
「好色秘事談綺」 佐藤紅霞 昭六、一〇
佐藤氏は同類の書で「人類秘事考」といふのを昭和四年二月に文藝資料研究會から出して發禁になつえゐる。「好色秘事談綺」もやゝ同樣内容の書で、本書は「日本好色美術史」と共に『好色文庫』の一篇として刊行されたものである。
「世界媚藥考」 昭五、一二
「風俗資料」増刊號として刊行、新菊判假綴八六頁、佐藤紅霞の世界媚藥考外三篇を収む、發禁。
  
〈中略〉
「寢室の美學」 原比露志 昭五、一〇
「苦痛と快樂」 竹内道之助譯 昭五、一二
「ポムペイの美術」 原浩三 昭六、六
「浮世繪と美人畫」 尾崎久彌 昭六、七
「獄中性愛記録」 酒井潔譯 昭六、八
「世界映畫風俗史」 小倉浩一郎 昭六、一一
「デカメロン」(雜誌)
「デカメロン叢書」

「風俗資料」 全七册

發行所 本郷區駒込坂下町  風俗資料刊行會
竹内道之助の經營編輯で、昭和五年四月より一ヶ年間、繼續刊行の豫定であつたのが、半ヶ年にで廢刊となつた。第一册より第六册迄と增刊號一册で全七册となる。發禁は第六册及增刊號「世界媚藥考」の二册である。

「デカメロン」全十六册

發行所 本郷區駒込坂下町  風俗資料刊行會
昭和六年二月創刊。翌年五月迄十六冊發行「風俗資料」廢刊後高級エロの雜誌として生れたもの。軟派文献史上特筆すべき研究並びに讀物を掲載した。發禁は六年七月號と同十二月號の二册。

 

〉〉〉今日の音楽〈〈〈

すっかり忘れていたのですが、パブロフス・ドッグのヴォーカル、デヴィッド・サーカンプ(David Surkamp)のサイン入りCDが出てきました。

デヴィド・サーカンプのWEBサイトで購入したCDです。
どのCDも2009年とあります。そのころは、ミュージシャンが自分のサイトでCDを直販するという方法が模索されていました。


Pavlov's Dog『Has Anyone Here Seen Sigfried?』01

Pavlov's Dog『Has Anyone Here Seen Sigfried?』02

Pavlov's Dog『Has Anyone Here Seen Sigfried?(The Lost Third Pavolov’s Dog Album)』 (Rockville)
1977年制作のお蔵入りになっていた第3作。2007年再発盤CD。

 

HI-FI『The Complete Collection of The Seatle Years 1981 thru 1983』01

HI-FI『The Complete Collection of The Seatle Years 1981 thru 1983』02

HI-FI『The Complete Collection of The Seatle Years 1981 thru 1983』
デヴィッド・サーカンプのサイトで購入したCD-R盤。
HI-FIのアルバム『MOODS for MALLARDS』(1982年)とミニアルバム『Demonstration Record』(1981年)とシングル『IT'S ALMOST CHRISTMAS』(1981年)をまとめた、2006年のドイツBLUE ROSE RECORDS版CDと同内容。

 

Pavlov’s Dog『Lost In America』01

Pavlov’s Dog『Lost In America』02

Pavlov’s Dog『Lost In America』(Rockville)1990年作品の2007年再発盤CD。

 

David Surkamp『Dancing On The Edge Of A Teacup』01

David Surkamp『Dancing On The Edge Of A Teacup』02

David Surkamp『Dancing On The Edge Of A Teacup』(2007年、Rockville)

盤ごとに「Forever…」「Rock On !!」「Thank You For Listening !!」「Wow !!」とことばが違うところに人柄を感じます。

 

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417. 1933年の『唐様でかめろん』(2024年3月25日)

『唐様でかめろん』01


三笠書房の最初の本は、昭和8年(1933)9月20日発行の『ドストイエフスキイ研究』とされ、私もそうなのだと思ってきましたが、国会図書館の送信サービスで確認してみると、『ドストイエフスキイ研究』よりも前に刊行されたものがありました。

昭和8年4月15日発行の蒲松齢作・尺仙秀訳『唐様でかめろん』が国会図書館で確認できた、もっとも古い三笠書房の本でした。
蒲松齢の『聊斎志異』の抄訳です。
『唐樣でかめろん』というタイトルには無理があります。
三笠書房の前身、風俗資料刊行会でだしていた雑誌が『デカメロン』だったということで、つけられたタイトルでしょうか。

今のところ、この『唐樣でかめろん』が、三笠書房の最初の本と考えてよさそうです。

訳者の尺仙秀が何者かは、分かりません。

「まへおき」には、北京に滞在したとき『聊斎志異』を入手したとあります。
また、「荻窪の里にて」とあるので、荻窪在住の人だったようです。

 

『唐様でかめろん』02

『唐様でかめろん』03

『唐様でかめろん』05

蒲松齢の『聊斎志異』から23編が翻訳されています。

 

『唐様でかめろん』04

○蒲松齢 尺仙秀訳『唐様でかめろん』昭和8年4月15日発行
刊行者 竹内富子
刊行所 三笠書房 東京澁谷八幡通一ノ十
印刷所 堀内印刷所

三笠書房は、昭和8年6月からの、秋朱之介が活躍した「淀橋区戸塚町一ノ四四九」でなく、渋谷で発足したようです。

 

〉〉〉今日の音楽〈〈〈

アメリカのバンド、パブロフス・ドック(Pavlov's Dog)のセカンド・アルバム『AT THE SOUND OF THE BELL』が無性に聴きたくなることがあります。

「Mersey」という曲は記憶の着火装置のようなもので、ポピュラー音楽だけが呼び起こせる感傷に、こうべを垂れてしまいます。

 

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)日本盤01

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)日本盤02

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)日本盤03

日本盤LPのライナーノーツは岡田英明(aka鏡明)。

 

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)日本盤04

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)日本盤05

▲パブロフス・ドッグ『条件反射』(1976年、CBS SONY)

『ロッキング・オン』誌で、岩谷宏が書いていたパブロフス・ドッグ『条件反射』レビューも印象に残っているのですが、もう40年以上読んでいません。
今読んだら、どう感じるのでしょう。

 

1970年代の鹿児島に輸入盤専門店はありませんでしたが、輸入盤のカットアウト盤や「For Governmental Sale Only」の印が押された税務上の在庫処分盤は、鹿児島のレコード店十字屋でも、ときどき「輸入盤バーゲン」として売られていました。
LP1枚2000~3000円だったとき、1000円以下のバーゲン輸入盤はありがたかったものでした。

 

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)US盤01

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)US盤02

カットアウト盤でもないのに安い「For Governmental Sale Only」と押された盤の意味が、買った当時には分かっていませんでした。

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)US盤03

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)US盤04

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)US盤05

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976)US盤04

▲Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』(1976年、Columbia)US盤

 

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』 1993年日本盤CD01

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』 1993年日本盤CD02

▲Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』 (1993年、Sony)日本盤CD

ライナーノーツは高見博史が書いています。
高見博史は、パブロフス・ドッグのヴォーカル、デヴィッド・サーカンプ(David Surkamp)が1980年にイアン・マシューズ(Iain Matthews)と組んだグループを「FM」と書いていて、そのことを知らなかった私は「FM」のレコードを探し回りました。
見つけることができませんでした。
グループ名が「FM」でなく、「HI-FI」だと気づいたのはだいぶ後のことで、ずいぶん回り道しました。

ネット以前は、正規版のライナーノーツでも、情報の正確さはこの程度のものでした。

 

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』 2013年EU盤CD01

Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』 2013年EU盤CD02

▲Pavlov's Dog『At Sound Of The Bell』 (2013年、Esoteric)EU盤CD

ジャケットの図版の黒みが強くて細部がつぶれてしまっています。こればかりはオリジナル盤に限ります。


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416. 1933年の『ドストイエフスキイ研究』(2024年3月24日)

ドストイエフスキー研究初版


しばらく1930年代が続きます。

三笠書房ホームページに、「1933年~     竹内道之助によって、海外文学の翻訳出版社として設立(1933年)。『ドストイェフスキー研究』(A・ジイド/竹内道之助訳)を処女出版」とあります。

昭和8年9月20日発行のアンドレ・ジイド、竹内道之助譯『ドストイエフスキイ研究』初版の装幀は、芹澤銈介。
続く再版、三版、四版の装幀は、秋朱之介(西谷操、1903~1997)です。

竹内道之助(1902~1981)と秋朱之介のつながりがいつから始まったか不明ですが、二人とも同じ時期に正則英語学校に通っていました。
そのころからの知り合いというか、友だちではあったようです。
秋朱之介の本づくりにかかわった人たちは、秋朱之介のことばでいえば、「みんな貧乏で、みんな友だちだった」ということでしょうか。

三笠書房創立のどのタイミングで、竹内道之助と秋朱之介が結びついたが分かればいいのですが、そのあたりは謎だらけです。


     

『ドストイエフスキイ研究』の第三版は手もとにありませんが、『ドストイエフスキイ研究』初版、再版、第四版を並べてみます。

 

ドストイエフスキイ研究初版02

ドストイエフスキイ研究初版03

古本として購入しました。
残念だったのは、写真はあげませんが、外函の背文字が日焼けで薄れていたためでしょうか、芹澤銈介の文字の上にマジックペンで上書きされていたこと。
前所有者にとっては、何の本か分かるようにという、実際的な理由からだったのでしょうが。

 

ドストイエフスキイ研究初版04

ドストイエフスキイ研究初版05

装幀 芹澤銈介

ドストイエフスキイ研究初版06

初版は1000部限定。

ドストイエフスキイ研究初版07

ドストイエフスキイ研究初版08

巻末には、アンドレ・ジイド著『モンテエニユ論』の近刊予告。
秋朱之介の装幀本です。

 

     

秋朱之介編輯『書物』第一冊・小春號(1933年10月1日発行、三笠書房)に掲載された「ドストイエフスキイ研究」の広告です。

『ドストイエフスキイ研究』広告01

 

秋朱之介編輯『書物』第二冊・葭月號(1933年11月1日発行、三笠書房)に掲載された「ドストイエフスキイ研究」の広告です。

『ドストイエフスキイ研究』広告02

 

秋朱之介編輯『書物』第三冊・臘月號(1933年12月1日発行、三笠書房)に掲載された「ドストイエフスキイ研究」の広告です。

『ドストイエフスキイ研究』広告03

『ドストイエフスキイ研究』広告04

近刊書目に、秋朱之介装幀の本が並んでいます。

 

     

アンドレ・ジイド 竹内道之助訳『ドストイエフスキイ研究』昭和8年11月10日再版
印刷者 堀内文治郎
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

手もとにあるのは裸本。

粗い麻布装の、秋朱之介らしい造りの本です。
粗い麻にタイトル文字の金箔押しはそもそも無理がありますが、朱の三笠書房のマークが鮮やかにつぶれているところは味になっています。

初版の誤植が修正され、初版にあった永瀬平一による「跋」がはぶかれて、再版の本文は、第三版・第四版にも使われています。

 

ドストイエフスキイ研究再版01

ドストイエフスキイ研究再版02

ドストイエフスキイ研究再版03

ドストイエフスキイ研究再版04

装釘 秋朱之介

ドストイエフスキイ研究再版05

ドストイエフスキイ研究再版06

ドストイエフスキイ研究再版07

巻末の三笠書房近刊書。秋朱之介装幀本が並んでいます。

 

     

○アンドレ・ジイド 竹内道之助訳『ドストイエフスキイ研究』昭和9年2月20日第四版
印刷者 堀内文治郎
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

外函なしの裸本。「上製本背角革金版平マーブル紙」の第三版に近い装幀のようです。
手もとにあるものは、背が割れて、状態がよくありません。

 

ドストイエフスキイ研究4版01

ドストイエフスキイ研究4版02

ドストイエフスキイ研究4版03

ドストイエフスキイ研究4版04

装釘 秋朱之介

ドストイエフスキイ研究4版05

 

初版1000部、再版500部、三版500部、四版500部と、版ごとに装幀を変えるのが、秋朱之介がいた時期の三笠書房です。

 

     

三笠書房ホームページに、

1933年~     竹内道之助によって、海外文学の翻訳出版社として設立(1933年)。『ドストイェフスキー研究』(A・ジイド/竹内道之助訳)を処女出版

とありましたが、国会図書館の送信サービスを使って調べてみると、昭和8年9月20日発行の『ドストイエフスキイ研究』以前にも、三笠書房の本は刊行されていました。

『ドストイエフスキイ研究』を刊行した「淀橋区戸塚町一ノ四四九」の時代の前に、三笠書房には「渋谷区八幡通一ノ十」の時代があったようです。

 

昭和8年(1933)から昭和9年(1934)の三笠書房の出版物と、秋朱之介が三笠書房を離れたあとの昭和11年(1936)までの出版物で秋朱之介に関係すると思われるものを、国会図書館の送信サービスで閲覧できるものを中心にピックアップしてみました。

昭森社に秋朱之介がかかわっていた時期に、堀内文治郎堀内印刷所と組んでいないことを明示するために、堀内文治郎堀内印刷所を青色で表示してみました。
堀内文治郎は、竹内道之助の妻、竹内富子の兄になり、堀内印刷所は三笠書房と強い結びつきがあります。

 

三笠書房 1

昭和8年4月~6月、「渋谷区八幡通一ノ十」で、刊行者が「竹内富子」の時代。

「渋谷区八幡通一ノ十」時代は、風俗資料刊行会(竹内道之助)の珍書出版の続きのままのようです。

○蒲松齢 尺仙秀訳『唐様でかめろん』 昭和8年4月15日発行
印刷所 堀内印刷所

国会図書館で確認できる本のなかで、もっとも古い本。

○原浩三編『ロップス画集』 昭和8年4月25日発行
印刷所 堀内印刷所
風俗禁止

○原浩三編『ビアズレエ画集』 昭和8年4月25日発行
印刷所 堀内印刷所

○酒井潔『薫苑夜話』 昭和8年6月5日発行
印刷所 堀内印刷所

 

三笠書房 2

昭和8年(1933)6月~昭和9年7月、「淀橋区戸塚町一ノ四四九」で、刊行者・發售者・発行者竹内富子の時代。

○ダニエルス 東京帝国大学水泳部訳『スピード水泳術』 昭和8年6月25日発行
刊行者 竹内道之助
印刷所 互光社印刷所

「淀橋区戸塚町一ノ四四九」時代の三笠書房の最初の本の刊行者は、竹内富子名義でなく、竹内道之助でした。
昭和8年(1933)~昭和9年(1933) の三笠書房で、竹内道之助が刊行者になっている数少ない本。

○アンドレ・ジイド 竹内道之助訳『ドストイエフスキイ研究』 昭和8年9月20日発行 1000部
印刷者 堀内文治郎
印刷所 萩原印刷所
装幀者 芹澤銈介

○秋朱之介編輯『書物』第一年第一冊小春號 昭和8年10月1日發售
印刷所 堀内印刷所  東京市牛込区山吹町一八一

内田百閒『百鬼園随筆』 昭和8年10月25日発行
印刷所 萩原印刷所
装釘 芹澤銈介 秋朱之介

○秋朱之介編輯『書物』第一年第二冊葭月號 昭和8年11月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○アンドレ・ジイド 竹内道之助訳『ドストイエフスキイ研究』昭和8年11月10日再版 500部
印刷者 堀内文治郎
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

○秋朱之介編輯『書物』第一年第三冊臘月號 昭和8年12月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○アンドレ・ジイド 竹内道之助訳『ドストイエフスキイ研究』昭和9年12月5日第三版  500部
印刷 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一番地
装幀 秋朱之介

○中原中也訳『ランボオ詩集』昭和8年12月15日発行
印刷者 池田正登 東京市小石川区関口水道町五
印刷處 一勝堂印刷所
装釘者 秋朱之介

○秋朱之介編輯『書物』第二年第一冊瑞月號 昭和9年1月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○内田百閒『冥土』再劂版 昭和9年1月1日発行
印刷 康文社印刷所 牛込区早稲田鶴巻町一〇七
装釘 秋朱之介

○『ドストイエフスキイ全集』第八巻 昭和9年1月1日初版発行
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

○『ドストイエフスキイ全集』第八巻 昭和9年1月20日再版発行
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

○プルウスト 近藤光治、齊藤磯雄訳『若き娘の告白』 昭和9年1月30日発行
印刷者 堀内文治郎 東京牛込区山吹町丁一八一
装釘者 秋朱之介

○秋朱之介編輯『書物』第二年第二冊花月號 昭和9年2月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○大内秀麿『白月歌集』昭和9年2月20日発行
印刷者 吉原良三 東京市牛込区早稲田鶴巻町一〇七
装幀 秋朱之介

ポオル・ジェラルデイ 西尾幹子訳『お前と私』 昭和9年2月20日発行
印刷者 池田正登 東京市小石川区関口水道町五
装釘者 秋朱之介

○アンドレ・ジイド 竹内道之助訳『ドストイエフスキイ研究』 昭和9年2月20日第四版  500部
印刷 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一番地
意匠 秋朱之介

○レオン・ピエエル・カン 吉村道夫、小田善一訳『ジイド研究』 昭和9年2月20日
印刷者 堀内文治郎 東京牛込区山吹町丁一八一番地

○秋朱之介編輯『書物』第二年第三冊桐月號 昭和9年3月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○片岡良一『現代作家論叢』 昭和9年3月12日発行
印刷者 堀内文治郎 東京牛込区山吹町丁一八一
装釘 秋朱之介

○『ドストイエフスキイ全集』第十三巻 昭和9年3月10日初版発行
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

○『ドストイエフスキイ全集』第九巻 昭和9年3月25日再版発行
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

○秋朱之介編輯『書物』第二年第四冊余月號 昭和9年4月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○『ドストイエフスキイ全集』第十一巻 昭和9年4月12日初版発行
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

○ゲーテ 中島清訳『ヴィルヘルム・マイステルの遍歴時代』 昭和9年4月20日発行
印刷 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
装釘 秋朱之介

○堀田捨次郎『剣道講話』 昭和9年4月20日発行
印刷者 堀内文治郎 東京牛込区山吹町丁一八一番地

○城左門『槿花戯書』 昭和9年4月29日発行
印刷者 堀内文治郎 東京 牛込区山吹町一八一
装釘 秋朱之介

○秋朱之介編輯『書物』第二年第五冊蒲月號 昭和9年5月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○『ドストイエフスキイ全集』第一巻 昭和9年5月10日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

○内田百閒『續百鬼園隨筆』 昭和9年5月20日発行
印刷所 堀内印刷所 東京牛込山吹町一八一

ジイド 淀野隆三訳『モンテエニユ論』 1934年6月
印刷 萩原印刷所 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八
日本限定版倶楽部 第三回刊本
装釘 秋朱之介

○『書物』第二年第六冊茘月號 昭和9年6月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○『ドストイエフスキイ全集』第十二巻 昭和9年6月10日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 萩原印刷所
装釘者 秋朱之介

○フエツグ・マアレエ 小野金次郎訳『柊林を描く』 昭和9年6月15日発行
印刷所 弘林堂印刷所 東京市渋谷区上通二ノ二〇

○秦豊吉『僕の弥次喜多』 昭和9年6月20日発行
印刷所 堀内印刷所 東京 牛込区山吹町一八一

○『書物』第二年第七冊七月號 昭和9年7月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市牛込区山吹町一八一

○内田百閒『百鬼園俳句帖』 昭和9年7月5日発行
印刷所 堀内印刷所 東京牛込区山吹町一八一

 

三笠書房 3

昭和9年7月~、「東京市神田区神保町三ノ六」で、 発行者・刊行者が「竹内富子」の時代。

○『ドストイエフスキイ全集』第二巻 昭和9年7月10日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二
印刷所 堀内印刷所
装釘者 秋朱之介

○『ドストイエフスキイ全集』第三巻 昭和9年7月14日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一
印刷所 堀内印刷所
装釘者 秋朱之介

○レフ・シエストフ 安土禮二郎・木寺黎二ほか訳『無からの創造』昭和9年7月18日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○ジイド 竹内道之助訳『田園交響楽』昭和9年7月20日発行
印刷 堀内印刷所 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二丁目二十二番地

○『ドストイエフスキイ全集』第十四巻 昭和9年8月10日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二
印刷所 堀内印刷所
装釘者 秋朱之介

○『書物』第二年第八冊八月號 昭和9年8月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市神田区三崎町二ノ二二

○大内白月『魚目集』 昭和9年8月15日発行
印刷所 堀内印刷所 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

『書物』第二年第九冊九月號 昭和9年9月1日發售
印刷所 堀内印刷所 東京市神田区三崎町二ノ二二

○『ドストイエフスキイ全集』第二巻 昭和9年9月10日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二
印刷所 堀内印刷所
装釘者 秋朱之介

○プルウスト全集第一巻 昭和9年10月20日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○『ドストイエフスキイ全集』第六巻 昭和9年10月10日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二
印刷所 堀内印刷所
装釘者 秋朱之介

○プルウスト全集第二巻 昭和9年10月20日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○青木庄左衛門『販売心理の研究』昭和9年11月10日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○プルウスト全集第三巻 昭和9年11月20日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○白柳秀湖『自然と労作』昭和9年11月15日発行
印刷所 堀内印刷所 東京神田区三崎町二ノ二二

○『ドストイエフスキイ全集』第十巻 昭和9年11月15日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二
印刷所 堀内印刷所
「装釘者 秋朱之介」のクレジットが消える。

○中山省三郎『ドストイエフスキイ』昭和9年12月10日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○『ドストイエフスキイ全集』第四巻 昭和9年12月15日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二
印刷所 堀内印刷所

○プルウスト全集第四巻 昭和9年12月20日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○プルウスト全集別巻一『若き娘の告白』昭和9年12月25日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

 

     

三笠書房以外で、1933年~1936年の秋朱之介に関係すると思われる出版物を、国会図書館の送信サービスで閲覧できるものを中心にピックアップしてみました。引き続き、堀内文治郎堀内印刷所を青色で表示してみました。

 

日本限定版倶楽部

○レイモン・ラディゲ 堀口大學訳『ドニイズ』
日本限定版倶楽部1933年12月第1回刊本 
發兌 日本限定版倶楽部 東京市淀橋区戸塚町一ノ四九九
発行 昭和9年1月13日
印刷 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八番地
発行 竹内富子 東京市淀橋区戸塚町一ノ四九九
装釘 秋朱之介

○アルチュウル・ラムボオ 堀口大學訳『酔ひどれ船』昭和9年2月11日発行
非売本
發行處 日本限定版倶楽部 東京市淀橋区戸塚町一ノ四九九
印刷 萩原芳雄 牛込区山吹町一九八
発行 竹内富子 淀橋区戸塚町一ノ四九九
装釘 秋朱之介

○アンドレ・ジィド、竹内道之助訳『イザベル』昭和9年11月10日発行
非売本
発行者 竹内富子 
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二
発行所 日本限定版倶楽部 東京市神田区神保町三ノ六

 

裳鳥会

東京市淀橋区角筈一ノ一 エルテルアパート

○『書物倶楽部』第一巻第一號 昭和9年10月5日発行
編輯兼発行人 秋朱之介
印刷人 池田正登 牛込区早稲田鶴巻町四十二番地
発売所 紀伊國屋書店 東京市淀橋区角筈一ノ八二六

○ルミイ・ド・グウルモン 堀口大學訳『彼女には肉體がある』昭和9年11月8日
上梓 裳鳥会 秋朱之介 東京市淀橋区角筈一ノ一
印刷 池田正登

○『書物倶楽部』第一巻第二號 昭和9年11月25日発行
編輯兼発行人 秋朱之介
印刷人 池田正登 牛込区早稲田鶴巻町四十二番地


文藝汎論社

有海久門『人生を行く』
昭和9年6月10日発行
刊行 岩佐東一郎
印刷 池田正登
装釘 秋朱之介

『西山文雄遺稿集』 150部
昭和9年8月5日刊行
編纂 城左門
刊行者 岩佐東一郎
印刷 池田正登
秋朱之介装釘

 

龍星閣

水原秋櫻子『定型俳句陣』
昭和9年9月15日発行
発行者 澤田伊四郎
印刷所 凸版印刷株式会社
装幀 秋朱之介

山口青邨『花のある隨筆』
昭和9年10月30日発行
発行者 澤田伊四郎
印刷所 凸版印刷株式会社本所分工場
秋朱之介装

 

アオイ書房

堀内敬三『ヂンタ以來(このかた)』 1000部
昭和10年1月20日発行
発行者 志茂太郎
印刷者 相良仁一
装釘 秋朱之介

 

昭森社 1

東京市京橋区銀座二ノ四

発行者 森谷均

秋朱之介(西谷操)の住んでいた「銀座二ノ四」の隣に森谷均が昭森社の事務所を構えた時代に刊行された本で、堀内印刷所で印刷されたものはないようです。

○小出楢重『大切な雰囲気』上製版 昭和11年1月9日発行
印刷者 土井儀一郎 東京市京橋区築地一ノ六

井上和雄『寶舟考』 昭和11年3月25日
印刷者 萩原芳雄
摺刷者 加藤潤二
製本者 中村重義

○石井柏亭監修『現代日本画大鑑』昭和11年3月30日発行
編纂兼発行人 森谷均
印刷人 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八

○城昌幸『ひと夜の情熱』 昭和11年4月19日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八
装釘・挿畫 峰岸義一

○ロバアト・バアトン 明石讓壽訳『憂欝症の解剖 第1巻』 昭和11年4月30日発行
印刷者 土井儀一郎 東京市京橋区築地一ノ六

○辻潤『[ボウフラ]以前』 昭和11年5月10日発行
印刷者 松村保 松村印刷所 東京市神田区西神田一ノ四

○宇野浩二『軍港行進曲』 昭和11年5月20日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八 萩原印刷所
鍋井克之装幀

堀口大學訳『マリイ・ロオランサン詩画集』 昭和11年6月1日発行
印刷者 土井儀一郎 東京市京橋区築地一ノ六 典文社

東郷青児『手袋』 昭和11年6月18日発行
印刷所 川崎活版印刷所 東京市京橋区築地二ノ五
印刷者 川崎佐一

○高畑棟材『山麓通信』 昭和11年6月19日発行
印刷者 松村保 東京市神田区西神田一ノ四
印刷 松村印刷所
秋朱之介装

モラエス 花野富藏訳『おヨネと小春』 昭和11年6月20日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町

○田中冬二『花冷え』 昭和11年7月6日
印刷者 土井儀一郎 東京市京橋区築地一ノ六

○莊原照子『マルスの薔薇 : ろまん・ぽえじい』 昭和11年7月10日発行
印刷 萩原印刷所
あとがき 秋朱之介

○佐藤春夫『霧社』 昭和11年7月15日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八
梅原龍三郎装
奥付「佐藤春雄」と誤植。

柳亮『巴里すうぶにいる』 昭和11年7月18日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八
海老原喜之助装

○辰野隆『スポオツ閑談』 昭和11年7月20日発行
印刷者 川崎佐一 東京市京橋区築地二ノ五

○林二九太『大東京は曇り後晴れ : サラリイマンユウモア戯曲集』 昭和11年7月20日発行
印刷者 萩原芳雄  東京市牛込区山吹町一九八
装幀 島田正吾

○堀口大學『涙の念珠』 昭和11年8月5日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八

 

昭森社 2

東京市京橋区木挽町三ノ二

発行者 森谷均

森谷均が、秋朱之介の「銀座二ノ四」から離れると、印刷者・印刷人のなかに「堀内文治郎」が登場します。

○川本信正『オリムピツク読本』 昭和11年8月10日発行
印刷者 川崎佐一 東京市京橋区築地二ノ五

○中野楚渓『図鑑近江の林泉』 昭和11年9月22日発行
コロタイプ印刷人 川住友次郎 東京市小石川区表町五
活版印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○井上友一『救済制度要義』昭和11年8月31日発行
印刷者 和田助一 東京市芝区芝浦一ノ二三
印刷所 単式印刷株式会社

○下田将美『経済の立場から』 昭和11年9月22日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八

○マリヤ・カステルスカ 柳亮訳『ポドラシイの伝説』昭和11年10月9日発行
印刷者 松村保 東京市神田区西神田一ノ四

○東郷青児『カルバドスの唇』 昭和11年10月20日発行
印刷所 萩原印刷所 東京市牛込区山吹町一九八
印刷者 萩原芳雄

○安藤盛『海賊の南支那』昭和11年10月23日発行
印刷者 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二

○『左川ちか詩集』 昭和11年11月20日発行
印刷人 堀内文治郎 東京市神田区三崎町二ノ二二
コロタイプ印刷人 川住友次郎 東京市小石川区表町五

*秋朱之介が離れた昭森社で、堀内文治郎が印刷を担当しているのが、何か象徴的なことのように感じます。

○池崎忠孝『国防の立場から』 昭和11年11月20日発行
印刷者 萩原芳雄  東京市牛込区山吹町一九八

 

昭森社 3

東京市小石川区大塚坂下町一〇二

発行者 森谷均

○村田孜郎『風雲蒙古』昭和11年12月20日発行
印刷所 萩原印刷所 東京市牛込区山吹町一九八
印刷者 萩原芳雄

○近藤治雄『やつれ鏡』 昭和11年12月25日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八

○長谷川了『赤化・抗日・防共』 昭和11年12月30日発行
印刷所 萩原印刷所 東京市牛込区山吹町一九八
印刷者 萩原芳雄

 

伸展社

東京都京橋区入船町一ノ二一

刊行者 中村重義

秋朱之介が森谷均の昭森社から離れ、「日本のナンサツチ・プレス」という意気込みで、永年の製本のパートナー中村重義と立ち上げた「伸展社」では、萩原印刷所が使われています。三笠書房時代から秋朱之介と付き合いのあった印刷所です。
初期三笠書房の本で「印刷者 堀内文治郎 東京市牛込区山吹町一八一」と「印刷所 萩原印刷所 東京市牛込区山吹町一九八」という組み合わせもあったので、堀内文治郎と萩原印刷所の関係も気になります。

ランボオ 堀口大學訳『酔ひどれ船』 昭和11年12月11日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八
印刷所 萩原印刷所 

クロオデル 山内義雄訳『庭』 昭和12年2月10日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八

○ジヤン・ポオラン 堀口大學訳『嶮しき快癒』 昭和12年5月11日発行
印刷者 萩原芳雄 東京市牛込区山吹町一九八


こうして並べてみると、秋朱之介が三笠書房を離れたあとの本に「堀内文治郎堀内印刷所」 の名前がないのが分かります。


〉〉〉今日の音楽〈〈〈

 

Pokrovsky Ensemble『Wild Field』01

Pokrovsky Ensemble『Wild Field』02

ドストエフスキイということで、ロシアの音楽で何かないかと思って探してみたら、The Dimitri Porkovsky Ensemble『The Wild Field』(1991年)が出てきました。
「ワールド・ミュージック」の渦中にいた、ピーター・ガブリエル(Peter Gabriel)が1989年にスタートさせたREAL WORLD RECORDSから出たCDです。
手元にあるのはUS盤。

ディミトリ・ポクロフスキー(Dmitri Porkovsky、1944~1996)は、モスクワで活動していた音楽家で、ロシアの伝承音楽を発掘・演奏していました。
この『The Wild Field』では、ロシアとウクライナの民謡を演奏しています。

ジャケットの絵は、ウクライナの画家カジミール・マレーヴィッチ(1879~1935)の作品です。

このCDが出た1991年は、ソヴィエト連邦が消滅した年でした。

いろんな意味で、時の経過を感じます。

ディミトリ・ポクロフスキーの没後も、アンサンブルは活動を続けていて、2023年に50周年を迎えています。
最近の演目を見ていると、「愛国」的な傾向にあるようです。
ウクライナの唄を歌うことがあるのでしょうか。

 

もう一枚ポクロフスキー・アンサンブルで、ストラヴィンスキーの『結婚』を、ロシヤ民謡スタイルで演奏した『LES NOCES』(1994年、Elektra Nonesuch、ワーナーミュージック・ジャパン)も、絵にかいたような土着的な響きの歌唱に驚きました。
ブルガリアン・ヴォイスを意識した「ロシアン・ヴォイス《結婚》」という邦題でした。

Pokrovsky Ensemble『Les Noces』

 

ボクロフスキー・アンサンブルのことは、ピーター・ガブリエルの1993年作「US」に少しだけ参加していて、知りました。

Peter Gabriel『US』(1993年)01

Peter Gabriel『US』1993年の日本盤CD。

 

Peter Gabriel『US』(1993年)02

Peter Gabriel『US』(1993年)03

Peter Gabriel『US』2002年のリマスター盤CD。

このアルバムも、昨年リリースされた『i/o』同様に、収録された10曲のそれぞれに、10人のアーティストによる絵画・造形作品が紐付けられています。

 

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